ここ近年、ヨーロッパでは日本の猛暑に負けないくらい暑い夏が続いています。8月末になっても暑さは続き、9月に入ってからもまだまだ日は長く、夏日を十分に楽しめます。天候的には、秋を感じるのはもう少し先ですが、人々の台所であるマルシェでは早くも秋の食材が登場します。日本同様、豊富な秋の味覚はとても魅力的です。
地場野菜で賑わうマルシェ
9月に入ってからも、マルシェでは取れたての野菜や果物が途切れる事はありません。夏休み前には、スペインやイタリアなどの南欧からの輸入品も多く、地場野菜は高額だったのですが、晩夏になると地元で採れた野菜がメインで売られます。冬になると、再び南欧の野菜ばかりになるので、夏から秋にかけてのシーズンは新鮮でおいしい野菜を手に入れる事が出来るベストの時期です。
写真は昨年9月のマルシェの様子ですが、ベリー類も初夏のイチゴやサクランボから、晩夏に実るブラックベリーやスグリの実に変わり、リンゴや洋ナシなども店頭に並び始めています。何気ない変化ですが、確実に夏の終わりと秋の始まりを感じる事が出来ます。
様々なキノコ
代表的なヨーロッパの初夏の食材として、白アスパラガスを紹介しました。人々の白アスパラ熱はすごいもので、レストランに白アスパラガスだけを食べに行くほどです。最高級の白アスパラガスは、お値段もお肉とあまり変わりません。
この夏の白アスパラガスに匹敵する秋の味覚が、キノコ。9月にもなると、マルシェにもキノコのスタンドがお目見えします。
様々な種類の中で、特に人気なのがオレンジ色のアンズダケ(独語:Pfifferlinge、仏語:Cantharellus)そして、「死のトランペット」というロマンチックな名前の付いたトランペットダケ(独語:Totentrompete仏語:Trompette de la mort)の二つ。秋のキノコ料理に欠かせない食材で、家庭ではもちろんレストランやカフェでも必ずメニューに登場します。マッシュルームに比べると値段は多少高いのですが、フランスやドイツの森でも採れるので、お財布にも優しい価格帯。シンプルにバターで炒め、クリームで煮込んだソースをパスタやパイ生地にかけていただきます。
日本の松茸狩りの様に、ヨーロッパでも秋のキノコ狩りはとてもポピュラーで、休みの日にもなると、森の中はキノコ辞典を片手にした家族連れでにぎわいます。
キノコの王様 トリュフ
上記で紹介したキノコは、日常的に手軽に食べられる秋の食材です。しかし、ヨーロッパの秋の食材で忘れてはいけないのが世界三大珍味の一つ、キノコの王様のトリュフ。スイスのマルシェでももちろん、売られていますが100gで約6000円と他のキノコの十数倍のお値段。それでも、トリュフを使った料理は絶品。少し奮発してでも手に入れたい食材です。
とはいえ、実際にはそう簡単に手に入る訳ではないトリュフ。そこでお薦めなのが、トリュフの香りがしっかりと濃縮されたトリュフオイル。トリュフ自体は少ししか入っていませんが、料理をおいしく香りづけ出来ます。スーパーでも、白トリュフオイル、黒トリュフオイルとして売られているので、お土産にもいかがでしょうか。
秋は狩猟料理で
さて、野菜や果物を紹介してきましたが、秋の味覚の大本命と言えば、やはりジビエ、狩猟料理でしょう。フランス語では、Gibierまたはchasseと呼ばれており、秋のレストランには通常メニューと合わせてジビエ料理が提供されます。ドイツ語圏でもWild(独語で野生の意味)としてほとんどのレストランにお目見えします。
ジビエ料理として提供されるお肉は様々ですが、ポピュラーなのが鹿肉、野ウサギ、ヤマウズラでしょう。特に鹿肉は最も人気のメニューです。野生のお肉は少し臭みがあるので、ワインとキノコとタマネギベースの味の濃い茶色い猟師ソースをかけていただきます。このソースに甘い秋のフルーツを添えるのがお約束。甘酸っぱいグロゼイユのジャムだったり、カリンの丸ごとコンポート、マロングラッセなどがお肉をさらに美味しく引き立ててくれます。
付け合わせはシュペツェレという卵とチーズを織り込んだショートパスタやフェットゥチーネなどの平たいパスタが定番。ソースが良くからんでとても美味しいのです。
ジビエは秋の限られた時期にしか食べる事は出来ません。秋のヨーロッパを旅行の際には、是非ジビエメニューに挑戦してみてください。ジビエのプレート一つからヨーロッパの秋を感じる事が出来ますよ。