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【海外の治安とマナー】ドイツのトラウマと難民問題

 

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地図記号に驚く

お寺の地図記号「卍」を変更することが検討されているようだ。
前々から日本を訪れたドイツ人から、地図を見た時のショックを聞かされていたので、
日本を訪れる外国人が増えてきた今、このような意見が出るのも自然な流れかもしれない。

鉤十字「ハーケンクロイツ」は、ドイツのナチスが採用したことによって、ヨーロッパでは負のイメージしかない。
しかし、「まんじ」(いわゆる十字に鉤がついたもの)自体は、
古くから世界の至る所で使われていたシンボルの一つで、ヒンズー教や仏教でも使用されている。
現に日本では寺院の地図記号であり、その他装飾や家紋などでも見かける。
ドイツ人たちもこの事実を頭では納得出来るようなのだが、
ナチスのハーケンクロイツのイメージが強すぎて拒否反応があるようだ。

実際ドイツでは、連邦刑法86条4項で国家社会主義組織(ナチス)の標章、旗、制服やスローガンの使用を禁止しており、
違反した場合は3年の禁固刑や罰金刑が課される。
ハーケンクロイツなどは、その最たるものだが、
それに類似したシンボルも禁止されているので、寺院の地図記号にドイツ人が驚愕するのも無理はない。

 

ナチス関連は完全タブー

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戦後ドイツは徹底的にナチス色の払拭を行ってきた。
ナチスというのは国家社会主義ドイツ労働者党の頭文字をとったもので、
いわゆる政党の愛称のようなものだが、現在はナチスという単語を使うのもはばかられる。

ドイツではこの時代のことを話すときは、「第三帝国」か「国家社会主義」としか言わない。
同様に、ヒットラーという単語は言語道断のタブーである。
歴史の話をする時に必然的に出てくるが、周りの目が気になってついつい声を潜めてしまいがちだ。

ドイツ留学時代、同じクラスにヒロヒトさんという名の日本人男性がいた。
昭和天皇の名前であり、日本では普通に存在する名前なのだが、ヨーロッパ人の学生やドイツ人の先生には驚きだったようだ。
多くのヨーロッパ人は日本の歴史をほとんど知らないのだが、
第二次世界大戦関連でカイザー・ヒロヒト、ヒデキ・トージョーは知っている人が多い。

そして、ドイツにおけるアドルフ・ヒットラーに該当する人物だと思われている。
アドルフという名前を現在のドイツ、そしてその他のヨーロッパの国でも子供に名付ける親はほぼ皆無と言ってよい。
アドルフという名前は勿論、自分の子供のイニシャルがナチ時代に使われていた短縮形、
SA(親衛隊)やSS(突撃隊)、KZ(強制収容所)になることがないように注意を払っている。
そんな人々からしてみると、ヒロヒトやヒデキがたくさんいる日本は考えられないわけだ。

 

日本式の挙手も

日本の学校で授業中に手を挙げる姿を思い浮かべてもらいたい。
手先もひじもまっすぐ伸ばして挙げる。
腕をまっすぐ上に伸ばしているつもりでも、ついつい少し斜め前に突き出す形になりがちだ。
この日本式挙手はナチス式敬礼に見えるそうで、ドイツ滞在当初、いたるところで指摘されてしまった。
ドイツにおいては、中指を立てる以上にこの挙手がタブーなので、注意しなければならない。

留学時代、日本人学生の間で流行った「バーデンバーデンに出かけた日本人学生」という笑い話がある。
温泉で有名な南ドイツのバーデンバーデンで、学生が温泉に入るかどうか話していた。
一人が「誰が入りたい?」と聞くと、みんな「入る」と手を挙げた。
この光景が地元民にネオナチに間違えられて通報されてしまった…というもの。

日本語の「はいる」という発音は、ドイツ語で「健康、無事、平安」などを意味するHeilとほぼ同じ発音。
ナチ時代、ヒトラー万歳という意味でハイルヒトラーという言葉が使われていたのは周知の事実。
Heilという単語自体は日常生活で普通に使われているが、
ただ単に「ハイル」と言うと、今でもナチスを連想させてしまうので普通は使わない。
「Heil」と叫び、そのうえ日本式の挙手をしていたら、ドイツ人の目にはネオナチの集団にしか見えなかっただろう。

 

徹底した歴史教育

このように、ドイツではナチスの時代は「悪」として徹底的に否定されている。
そして、二度と同じことを繰り返さないように戦争歴史教育も盛んに行われてきた。

以前ドイツの高校生の歴史の教材に触れる機会があったが、
私たち日本人が日本史で習う第二次大戦下の日本に関する何十倍もの内容をかなり詳しく学んでいた。
しかし、留学時代にドイツ人学生と第二次世界大戦に関して話そうとしたら、連続して2人に断られてしまった。
日本も同じ敗戦国だから(あまりフォローになってないが…)責めるようなことは言わないと言ったのだが、
気が滅入るほど勉強させられたので、このテーマに関して話すのは嫌だという理由で辛くなに拒否されてしまった。

「ドイツはすべてをナチスのせいにして責任逃れをしている」という声もあるが、
史実をしっかり教えている姿勢は素晴らしいと思う。
しかし、こうした徹底した姿勢が生真面目なドイツ人にナチスへのトラウマを植え付け、
それが結果的に今後の火種になりそうで心配でもある。

過去のトラウマ


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ご存知のように、昨年末からヨーロッパに難民、移民が押し寄せて来て、どこの国も大変なことになっている。
その原因を作ったのは安易に難民の受け入れを宣言したドイツのメルケル首相だと、彼女は国内外から批判されている。

しかし、ヨーロッパの外からやってきた私には、難民受け入れ宣言をしたドイツの態度に同情せざる得ない。
日本では、ドイツは戦後謝罪し他のヨーロッパ諸国と戦争のわだかまりもなく上手くやっていると思われがちだが、
実際は何かあると常に「ナチス」と批判されて陰口をたたかれている。
法律を守っていない外国人を罰しても、借金の催促をしても、「ヒトラー」と返されてしまう。
今までも「過去のツケ」として、様々なことを寛容に受け入れる態度を周りから期待される状況が続いていた。
そして、徹底した歴史教育の末に、ドイツ人はかなりの無理難題もナチスの反省として受け入れてきたように見える。

しかし、何とか押さえつけていた感情が、このままだと爆発しかねない。
実際、反移民の動きはドイツ国内で徐々に過激化しつつあり、我慢していたぶん大爆発を起こしかねない。
他のヨーロッパの国々でも、ドイツ人が寛容に難民を受け入れる態度の裏にはナチス時代に対するトラウマが潜んでいることを知っている。今のドイツの状況から「今度の大戦もまたドイツから始まるんじゃないか」と心配する声もあがり、
「ナチス時代を逆手にとって、ドイツに責任を求めすぎた結果が今回の事態を生んだ」という自省の論調も言われ始めた。
そして批判の矛先は、こうしたドイツ人の感情を利用した(と思われている)移民へと向かっている。

戦後70年が経過し、世界は新たな歴史の転換期にある。
過去を反省する真摯な態度は素晴らしいが、これが現在のドイツの選択に過剰に影響を与えるようならば、
この辺りで一度立ち止まり、色々な視点からよりオープンに議論されるべきではないかと思う。

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