スケッチブック

建築少年一人旅 [ ドイツ ]

 

歴史、美術、食、ショッピング・・・旅のテーマはひとそれぞれだが、今回は私の専門でもある建築をテーマにした旅について書いてみたいと思う。少しマニアックな内容も含まれてくるが、一般の方、またこれから留学を志そうとする方の参考になればと思う。

 

旅の必需品

建築を勉強している人は旅好きが多いという。建物は動かすことができず、絵画のように世界中を巡回することができないために、こちらから見に行かなくてはならないからだ。その例にもれず、私も学生時代には憧れの建築を見にヨーロッパへ何度も旅をした。通常の旅行グッズに加え、建築旅行者にとっての必須アイテムは何と言っても、ペンとスケッチブックだ。

スケッチブック

スケッチブック

 

世界に一つのお土産

遥々遠いところまでお目当ての建築を見に来たという熱い想いをぶつけるように、そこで見た風景、感じた空間をスケッチブックに描き残すのだ。長旅になってくると、スケッチブックが何冊にもなり重くなってくるが、確かに写真を撮るだけでは感じられない何かが残るのだ。建築が目当ての旅ではない人にも、少し長めに滞在できる時は、上手い下手など気にすることなく、とにかく感じたままに何かを描いてみることを、ぜひおすすすめしたい。街の風景、景色など、なんでも良い。自分の手で描くことで、世界に一つだけの思い出深いお土産ができるのだ。

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世界の建築少年

旅先で幾度となく、世界中からやってきた建築を志す若者達が、皆熱心にその場に数時間滞在し、同じように名建築をスケッチする光景を目にする。その度に、「あぁ、世界中には仲間であり、ライバルともなる同士がこんなにもたくさんいるのだ。」と、嬉しいような負けてはいられないという熱い気持ちを抱くのだ。そして時に目が合って、何気ない会話から、友達になったりするから旅は面白い。

Paris

Paris

 

真面目に話すと笑われるのだが、スケッチ以外にも、名建築を求めて旅する人に共通する特異な行動があるのでその幾つかをここで紹介しようと思う。

1. 壁を叩く : 彼らは壁の材質にとても興味がある。それが構造体なのか、若しくは構造には関係ない壁なのか。それによって彼らは建物の構成を把握したいのだ。

2. 手すりを揺する : 建築物において、実は手すりはとても重要な要素なのだ。高い場所や階段から落ちないための安全性が最も重要ではあるが、高さの異なる空間をつなぎ合わせたり、さりげなく隔てたりと、そこには建築家の意図が込められている。素晴らしい建物には往々にして、美しい手すりがある。そして建築少年達はその手すりに感動しつつ、見た目がカッコイイだけではないのかと、平静を装いながらガシガシ揺すって安全性を確かめるのだ。

3. 階段やスロープを何度も上り下りする : 手すりと同様に階段もまた建物の見せ場の一つである。階段は高さの異なる空間を繋ぐだけでなく、そこから見える景色を楽しませたり、意外な視点を提供したりと空間に動きを与える装置でもあるのだ。彼らはこの階段が大好きな生き物なので、味わうように何度も上ったり下りたりするのだ。

以上のような共通項をもっているため、数多くの観光客の中でも、建築少年達は同士の存在をめざとくキャッチできる。そして同じ志をもっているので、すぐに打ち解けられるのだ。私はこの方法で仲間を見つけた上に、その後の建築ツアーを共にしたという経験が何度もある。

London

London

 

自分を伝える

とはいえ、初めてのヨーロッパ長期旅行の後、私は一つのことに気がついた。自分自身の事が上手く伝えられないのだ。語学が苦手なために自分の考えていることを伝えきれないという以上に、自分の所属や肩書きで話そうとすることに慣れてしまっていたからだ。海外の人に自分の大学名や所属を言ったところで、もちろん知っているはずもなく、結局話が盛り上がらないのである。そこで私は、その次の旅行から、大学の課題で設計した作品や日本の写真などを持って行くことにした。

そうすると現地で話している時に、どんなことを勉強しているのか、また何に興味があるのかを一発で伝えることができる。それ以降、飛躍的にコミュニケーション力があがり、旅先での出会いがより豊かになり、興味を持ってくれた現地の人達もとても親切にしてくれた。

自分の作品を持って旅

自分の作品を持って旅

 

フィンランドでの思い出

ある年、フィンランドを旅行中に、乗っていた特急電車が1時間近く遅れたことがあった。少し心配になっていた私に、近くに座っていた女性が、「よくあることだから心配いらないよ」と教えてくれた。せっかく話しかけてくれたのだからと、世間話のつもりで作品のスケッチを見せながら、日本の建築学生であることを話した。そしてフィンランドの建築に興味があるのだと言うと、「それならこの街の近くにあるペタヤヴェシの木造教会は絶対に見ないと!」と彼女は言ったのだ。

車窓からの風景

車窓からの風景

 

ペタヤヴェシの木造教会(Petajavesi Old Church)は地元の農夫たちが自分達で建設した教会なのだが、無骨ながらも他に類をみない様相と建設方法でユネスコ世界遺産にも登録されているもので、もちろん私も知っていた。しかし街からかなり離れた農地の真ん中にあるため、公共交通もなく、訪れることは難しいと諦めていた建物だった。すると彼女は「明日の朝9時に、大学の門の前にいらっしゃい。私が車で連れて行ってあげるから。」と言ってくれたのだ。

彼女の車は、日本では中古でもなかなかお目にかかれないほどのオンボロで、乗り心地も地面の感覚がダイレクトに伝わってくるかのようであった。しかし、彼女のように素朴で温かいフィンランドの人達が建設した事を思いながら眺めていると、その教会のもつ雰囲気や荒々しくも手の痕跡が残るディティールに込められた思いを、全身で感じているという気分になったのを今でも覚えている。そして出会いがより豊かにしてくれた旅は、いつまでも忘れられない建築少年時代の思い出となっている。

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