Celebration

ワールドカップ・ドイツの反応 [ ドイツ ]

 

ドイツ代表が24年ぶりに優勝し、ブラジルで開催されたサッカー・ワールドカップが幕を閉じた。史上初の4大会連続の準決勝進出、そして今回の優勝と安定して好成績を収めていることは高く評価されるべきだろう。インターネットで配信される日本のニュースなどでも賞賛の記事を多く目にする。しかし始めから、ドイツ国内で皆が今回の結果を予想していたかというと、私の知る限りそうではなかった。そこにはドイツの人々の特徴的な気質が見え隠れしている。今回はそんなワールドカップに対するドイツ国内の反応を、私の友人や会社の同僚、また私の住むベルリンの街の様子などから見ていくことにしよう。

Berlin

Berlin

 

慎重な性格

まず一般的にドイツの人は、慎重な性格だと言われている。故にいくら調子が良くても、「今回はどうなるかわからない」、「何が起こるかわからないから油断できない」、といったコメントを耳にすることが多かった。もちろん個人差はあるが、それはドイツの教育方針からくる部分が少なからずあるようだ。ドイツでは、ナチス時代に大勢に流され大犯罪の加害者となった反省から、個人で考えることや物事を批判的に見ることが大切とされている。そこからもたらされるやや悲観的な部分からか、あまり楽観的なことは口に出したがらない人が多いように感じている。まして優勝予想などは、私の周りでも、メディアでも皆無であった。

それが顕著に現れたのが、本大会グループGの初戦、ドイツはポルトガルという同じ欧州の強豪国相手に4-0という快勝を収め、最高のスタートを切った時だ。さすがに皆期待を込めて、「今大会はイケる!」と浮かれているのかと思いきや、皆口を揃えて「まだ一試合目だから」、「次の試合を見てみないと」と言うのだ。確かにそうなのだが、もう少し浮かれても良いのでは無いかと楽観的な私などは思ってしまった。一般人の声だけにとどまらず、ドイツのメディアも同様に、手放しで褒めることは少なく「勝利は収めたが、○○の部分はまだまだ」といった気を引き締めるような内容が多かった。それが勝ち進む事が当然のごとく期待されている、強豪国チームの宿命という部分もあるのだが。

真剣な眼差しで観戦する人々

真剣な眼差しで観戦する人々

 

盛り上がる時は全力で

しかしゴールを決めたり、勝利を手にした時の熱狂という点では、前述の慎重さとは全く違う側面が見えてくる。まず驚くべきことに、街なかにいてテレビを見ることができない状況であったとしても、だいたいの試合の状況はリアルタイムで把握できるのだ。なぜなら街中のほとんどのレストランやコンビニさえも店内や表通りに向けてテレビを設置し、「ミニ・パブリックビューイング」を開催しているため、たとえ会社からの帰宅途中でも映像やその観戦者たちの反応から、試合の展開が手に取るようにわかるのだ。

オフィスの前でもパブリックビューイング

オフィスの前でもパブリックビューイング

さらに得点が入るたびに、どこからともなく「バン、バーン!!」と花火の音が響き渡る。これは何処かで特別なイベントが開催されているというわけでもなく、単に個人が準備した「祝いの花火」が打ち上げられるためだ。しかも一箇所では無く、街中あちらこちらで。そして同時に、街中のパブリックビューイングからどこからともなく歓声が聞こえてくる。まさに街全体が沸く、という表現がぴったりのにぎやかな狂喜に街が包まれるのだ。

また街中の反応として特徴的なのは、試合当日はドイツのナショナルフラッグをよく見るということだ。単に車に旗を刺している場合もあれば、ドイツのフラッグ色のサイドミラーカバーや花飾りといったデコレーションの場合もある。また家の窓からフラッグを掲げたりもしている。そんなドイツだが、表立ってナショナルフラッグを掲げられるようになったのは、何と2006年のドイツ・ワールドカップ以降のことだという。ナチス犯罪を周辺国に謝罪し続け、和解が進んだ近年まで、強いナショナリズムの表現を国としても自重してきたからだ。

ナショナルフラッグをつけた車

ナショナルフラッグをつけた車

決勝戦のその日、ベルリンの街は朝からそわそわしていた。昼過ぎにカフェに出かけても、いつもの賑やかさは見られない。それもそのはずだ。昼過ぎにはベルリン最大のパブリックビューイングが行われる、ブランデンブルグ門周辺には物凄い数の人が集まっていたからだ。このパブリックビューイングは、長さ約2km、40万人以上を集めるというとてつもない規模のものだ。

試合開始数時間前から降った激しい雨に耐え、両チーム激しく攻めあった一進一退の攻防を延長戦まで見守った後に、ついに手にしたマリオ・ゲッツェのあまりにも美しいゴールが決まった瞬間、地響きのような歓声の中に私はいた。前回の優勝から24年、そして東西ドイツが統合してから、初めてのワールドカップ優勝。

Celebration

Celebration

今回の代表チームの特徴は、2000年以降取り組んできた改革の成果として、ドイツ以外にルーツを持つ選手が増え、さらに上は36歳から下は20歳までと個性も年齢層も非常に多様性に富んでいることだった。そしてこの決勝戦でワールドカップ通算得点記録を更新した36歳のミロスラフ・クローゼが、今回22歳で初めてワールドカップに挑んだゲッツェに交代し、彼が決勝ゴールを決めた時、ドイツの人々は一つの時代の終わりと、新たな時代の到来を感じたという。歓喜に沸く街なかを、ナショナルフラッグをつけた車で走り回る、ゲッツェと同世代の若者達は代表チームと同じように多様性に満ちていた。彼らはまた、国を象徴するものにも抵抗の少なくなった新しい世代なのだ。

アンゲラ・メルケル首相は過去に、「サッカーのドイツ代表チームは、私たちの国のロールモデル」だと言っていた。戦争犯罪と東西ドイツの分裂という二つの出来事を乗り越え、EUにおいて中心的役割を果たすようになってきた今感じられた、新たな時代の到来。過去の重荷を抱えながらも教育や移民政策に一歩一歩取り組んできたことが少しづつ形になっていく一方で、あと一歩優勝には手が届かず忍耐の日々だった。今回のワールドカップでの成果はその成績以上に、ドイツの人々にこれまで正しい道を歩んできたのだと確信させた、歴史的に大きな意味をもつ出来事になったのではないだろうか。

 

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