ドイツの小学校

「受験勉強の無い国」ドイツの学校教育と国民性

 

ドイツの小学校

ドイツの小学校

 

似て非なる日本とドイツ

ドイツといえば、自動車産業や工業製品、ハイテク産業が盛んな国として、日本と共通する部分が多いと思われる方も多いだろう。また勤勉と言われるその気質も日本人と共通する部分だろう。実際その通り、私自身もここドイツは、生活や仕事の中で日本との違いを感じることが少ない国の一つだと思っている。

しかし、最も大きな違いがあるとすれば、それは物事に対する「考え方」の違いだと感じている。そしてそれらは目に見えるものでは無いため、ガイドブックなどの情報としては伝わりにくい。また旅行などでは触れる機会も少ないので、あまり日本には伝わっていないように感じている。

ではその最も大きな考え方の違いとは何なのか。それは、自分の意見をしっかりと持ち、その考えをはっきりと表明していくことが正しいという考え方である。そしてこの点こそ、今日のドイツにおける学校教育の根幹であり、現代ドイツを理解する大きな鍵となる。

 

現代ドイツの学校教育

現代ドイツの学校教育

 

ドイツの成績評価システム

まず、ドイツではテストの点数だけで成績が評価されることは無い。テストの点数は、成績を決める材料の半分でしかなく、授業への参加意欲や取り組み方、また発言内容などが、成績を決めるもう半分の要素なのだ。これらは目に見える評価基準では無いので、そこは教師の裁量次第となる。日本では、これでは不公平だとして点数化を求める声があると思うが、ドイツでは、教師は目に見えない子ども達の能力や気持ちも評価できなければいけないということだ。

次に、テストの中身が全く違う。ドイツでは選択問題というものが少なく、日本の中学校高学年にあたる頃から、科目に依らず自分の考えを書くテストが多くなってくる。これもまた、正解、不正解が簡単には判断できないので、教師はその考え方を細部まで理解し、「ここまではOK、でもここからはもう少し考えを深める余地がある。」といった採点をするのだ。単なる正解、不正解だけでは無くこのような採点をするためには、教師自身の能力と労力は計り知れない。付け加えると、教科書や教材も各教師が自分の考えを元に選ぶというのだから驚きだ。

 

校庭の風景

校庭の風景

 

ディスカッション中心の授業

また授業内容も、特に社会科などでは生徒が調べて発表し、それを皆でディスカッションするような授業が多いため、教師の役割はさながらオーガナイザーといったところだろうか。また時には教師自身も自分の考えをぶつけ、生徒とディスカッションすることもあるという。このような授業形態により、生徒は自主的に考え、発言する習慣を育てられるのである。

 

受験勉強の無い国

このような考え方に基づくため、ドイツでは日本のようなテストでの受験といったものは無い。大学入学におけるセレクションは、それまでの学生生活での評価と面談などによって判断される。このシステムにより、ドイツでは受験のための勉強といものが無いのだ。小学校、中学校の「お受験」などももちろん無い。受験ビジネスというものが存在しないので、街なかに塾や予備校というものを見かけることもない。この違いは、移住当初の私にはかなり新鮮な驚きであった。

 

子どもたちの遊ぶ姿は世界共通

子どもたちの遊ぶ姿は世界共通

 

教育方針の転換

では何故、個人の考え方や発言、ディスカッションを重視し、テストや受験を目的としない教育方針になったのか。それはドイツの歴史に常に黒い影を落とす、ナチスの歴史への反省から来ているのだ。ドイツは永久に消せることの無い罪と自ら認めるこの戦争犯罪を二度と繰り返さないために、物事を批判的に見る目を養い、個人が一人一人考え、大勢に流されず自分の意見を持つこと、そしてもし間違っていると思えば、勇気を持ってそれを主張できる人々を育てることが大切だと考えられている。例えば国が誤った方向に進み始めた時、それを止められる人々が出てくるのか。社会にそれを止める自浄作用はあるのか。国民にはその正否を判断し、正しい方向に舵を切る知性と判断力があるのかが問われている。

 

議論好きの国民性

これらを実現するために、ドイツでは議論の力が信じられている。この国では議論をすることは、より良い答えを導く最善の手段と考えられているため、学校の授業でも議論を中心にしたものが多いのだ。その気質故に、職場でもテレビでビアホールでも、ドイツ中議論だらけと言っても良いくらいだ。欧米では会議は短いというのが日本の認識だが、ドイツでは激しい議論の為に、数時間にも及ぶ会議も当たり前だ。ただし、議論の結果導き出された答えにはとても納得感があり、皆後腐れなくサッと切り替えて仕事に取りかかる。あまりの議論の多さに時には疲れてしまうこともあるが、学校教育から育まれているこの国民性が、現代ドイツという国を形作っていると感じている。

 

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