店頭に並ぶslatur<スラゥトゥル>という名の羊の詰め物

アイスランドの第一次産業といえば

 

トップページ用_1世界には農業・漁業・畜産業などさまざまな第一次産業がありますが、自然環境の影響を如実に受けるため、ある国で盛んな第一次産業を見れば、その国の歴史や国民性をより深く理解できる・・・・のではないでしょうか。アイスランドの第一次産業はといえば、作物が生育するのに厳しい自然環境ということもあり、農業より畜産業、なかでも羊の飼育が盛んです。

 

羊とアイスランド人

夏の間、至るところで見かけられる放牧された羊たち

夏の間、至るところで見かけられる放牧された羊たち

ノルウェーから新天地を目指してやってきたバイキングたちが船に積んでいたのが羊。というほど、アイスランド人と羊は歴史的にも長い付き合いです。比較的寒さに強く、毛は編み物に使え、肉はタンパク質・ビタミンなどの栄養を豊富に含む羊は、こちらの人にとって牛や鶏よりも身近な動物であります。アイスランド統計局の2010年の統計を見ると、アイスランド人の人口が318,041人であるのに対して、飼育されている羊の頭数は463,381頭。なんと、人間より羊のほうが多く住んでいるのです。

 

羊が季節を教えてくれる

毎年9月に行われる羊の収穫祭

毎年9月に行われる羊の収穫祭

日本では、種々さまざまな農作物が四季を教えてくれますが、こちらでは羊がその目安。例えば、夏の終わりと秋の訪れを告げるのは、9月に行われる羊の収穫祭(rettir<リェッティル>)です。これは、養羊業者が夏の間に放牧していた羊を山や谷から集めて、どの羊を残し、どの羊を売るかを決めるイベントで、家族や友人を招いて行われます。9月にアイスランドにいらっしゃる場合、rettirというキーワードで検索してみると、いくつかイベントの告知が見つけられ、観光客でも飛び入りで見学に行くことも可能です。義理姉が毛糸用に羊を一頭所有している関係で、私もその飼育をお願いしている養羊業者の方のrettirに行ってみたことがありますが、周囲一面苔のむした火山土の真ん中で、木の囲いに何十・何百頭もの羊を集めた光景はとても雄大でした。この後すべての羊は羊舎に移され、参加者には養羊家の方から手作りのケーキやスープが振舞われます。

 

羊の食べ方

ある日の我が家の夕食。木のまな板に乗った塊肉が羊肉です

ある日の我が家の夕食。木のまな板に乗った塊肉が羊肉です

羊の収穫祭が終わると、10月から11月にかけてはその肉が店頭に並び始めます。冷凍技術のおかげで、羊肉は一年中スーパーで購入できるのですが、やはり秋の羊は新鮮で、種類も豊富。普通の家庭において、もっとも一般的な羊肉の食べ方はバーベキューグリルで焼くか、オーブンで焼くかです。アイスランドの羊は、海からの潮風を受けて育つハーブを食べて大きくなるので、肉にあまり臭みがなく、柔らかくてほんのり塩味がするのが特徴です。そんな羊肉を塊で購入し、セージやオレガノ、バジルなど種々さまざまなハーブをすりこみ、オーブンでじっくりと焼き、付け合わせにはジャガイモとサラダ。これぞ王道の「家庭羊肉料理」です。

 

羊料理といえば外せない?

店頭に並ぶslatur<スラゥトゥル>という名の羊の詰め物

店頭に並ぶslatur<スラゥトゥル>という名の羊の詰め物

さて、日本では例えば魚の料理法がたくさんあるように、アイスランドにも羊肉から作られる食品にはさまざまなものがあります。中でも代表的なのは、slatur(スラゥトゥル)。これは羊の血や内臓を胃袋に詰めたもので、主に血液で作ったblodmor (ブローズモール)とレバーから作られるlifrarpylsa(リフラプルサ)の2種類があります。スコットランドの伝統食「ハギス」に似た食べ物で、外国人にはすこぶる受けが悪いのですが、スコットランド人には割と好評だったりします。

スラゥトゥル作りのひとこま。画像は義母提供

スラゥトゥル作りのひとこま。画像は義母提供

秋になると、親族の女性が集まってこのスラゥトゥル作りをするのが、新聞にものる風物詩で、各家庭ごとに秘伝のレシピがあるそうです。一般的には羊の胃袋をきれいに洗い、手のひらよりやや大き目の袋の形に縫い、中に羊の血液・レバー・脂肪・穀類(ライ麦や大麦など)・オートミール・ハーブを混ぜたものを詰めて作られます。お味のほうは・・・・、羊の濃縮された風味が鼻から抜ける感じ、と申しておきましょう。子どものころから食べて育たないと、ちょっと難しい味だと思います。

 

そのほかの羊料理

スーパーでは、びっくりするような羊の部位も売られています。これは頭部を半分にカットしたもの

スーパーでは、びっくりするような羊の部位も売られています。
これは頭部を半分にカットしたもの

羊肉を使った料理には、ほかにもクリスマスの時期に食べられるhangikjot(ハンギキョット)という燻製肉、svid(スヴィーズ)という羊の頭を半分にして煮たもの、saltkjot(サルトキョット)という塩漬けにした羊肉’などがあります。スヴィーズは見た目からして外国人には難しいものがあるのですが、ハンギキョットやサルトキョットは羊独特の風味があまりせず、味も十分ついているので、もし冬にアイスランドにいらっしゃって、ぜひアイスランドならではの料理が食べたいということでしたら、一度試してみることをおすすめします。

厳しい自然環境のなか、貴重な食料である羊を余すところなく食べようというバイキングの知恵がこれらさまざまな羊料理を生んだのですが、近頃はスラゥトゥルやスヴィーズを食べられないという若いアイスランド人も増えているらしいです。アイスランドの伝統からこういった料理が将来消えてしまう事態になったら、ちょっと寂しい気持ちがしますね。私がこれらをおいしいと味わって食べられる日は一生来ないと思いますが・・・。

 

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