長い冬にさようなら
ロシアの冬は4ヶ月ほど続くためとても長く、さらには朝の10時頃から4時頃までしか太陽が出ないという日照時間の短さから、ロシアの人々は春の到来を今か今かと待ち望んでいます。
そしてロシアで旧正月にあたる2月下旬には、「マースレニッツァ」と呼ばれる春のお祝いがあります。このマースレニッツァは一週間ほど続き、「ブリヌイ」と呼ばれるクレープのようなホットケーキのような食べ物を食べて、春の到来をお祝いします。この季節がやってくると、ロシアの人々は「やっと冬が終わった!」と感じるようです。
太陽の精霊に春のぬくもりを願う
このマースレニッツァという行事、もともとはロシア正教の宗教行事であり、「ルーシ」というロシアのもととなった東スラブ民族の国で広まったもので、今はあまり厳しくないですが、イースターのように肉や魚を食べずに過ごす期間でもあったそう。
マースレというのは“太陽の精霊”という意味と“油、バター”という意味があります。太陽の精霊に、「早くこの寒い冬を終わらせて、暖かい春を運んできてください。」という願いが込められています。
その願いを叶えてもらうには、太陽の精霊への生け贄が必要なのです。生け贄といってもかかしなのですが、藁でかかしを作って古い洋服を着せ、女の子の顔を描きます。そのかかしをそりで引っ張りながら、歌を歌い町中をめぐります。最後は燃やしてしまうのですが、今は写真のような太陽の顔の可愛い“ミニチュアかかし”も売っています。
毎日がブリヌイ祭り!
このマースレニッツァは一週間続くとご紹介しましたが、毎日にそれぞれ名前がついているのです。例えば月曜日はマースレニッツァの始まりを祝う“祝いの日”、火曜日はそり遊びをしたり、歌を歌ったりする“遊びたおす日”。そして水曜日はテーブルの上に食べ物をいっぱい並べて、食事を楽しむ“美食家”の日などなど。
特に一番大事とされているのが週の真ん中にあたる木曜日。この日は別名「姑の日」とも呼ばれているのですが、たいていこの木曜日に結婚している夫婦は妻の実家へ行きます。そして妻の母が作るブリヌイやバターや油を使ったじゃがいも料理をごちそうになるのです。春の訪れを一緒に祝うのはもちろんですが、油やバターを使った料理には“生活がなめらかに、上手くいきますように”という思いもこめられています。きっと家族円満への期待もこめられているのかもしれませんね。
このマースレニッツァでは毎日ブリヌイを食べるのが伝統となっていますが、なぜこのパンケーキのようなブリヌイを食べるのでしょう。ブリヌイの形をよーく見てください。太陽のようにまん丸ですよね。ロシアの人々はこの太陽のような丸い、ほかほかのブリヌイを食べることでも春の訪れを願っているのです。
そのためモスクワのあらゆる広場では木でできた即席の小屋が建てられて、温かいブリヌイや紅茶、マースレニッツァを祝うかかしなどが売られています。
ブリヌイの美味しい食べ方
このブリヌイ、材料は小麦とそば粉を混ぜたものに卵と砂糖、牛乳を入れて焼いたシンプルな料理。このブリヌイは何を添えて食べるかがポイントなのです。
甘いブリヌイを楽しみたい方は、ロシア名産の蜂蜜やホームメイドの果実が残ったジャムなどがおすすめ。ロシアではジャムは手作りする家庭が多く、森で摘んだラズベリーやイチゴのジャムは特に人気があります。
甘くないお食事系だと、スメタナ(ロシアのサワークリーム)やイクラ、豚ひき肉と一緒に食べるのが一般的。特にスメタナはボルシチに欠かせないロシアでは必需品なので、何がなくてもスメタナさえあれば大丈夫!という人が多いです。
ロシアの春の味覚、ブリヌイ。これを食べて一緒に春をお祝いしませんか?