日本でも報道されているカタルーニャの独立問題ですが、
スペイン事情に詳しくないとピンとこないかもしれません。
カタルーニャとは一体どんな地域なのか? どんな問題が起こっているのか? 簡単にまとめてみました。
「私はスペイン人ではない。カタルーニャ人だ」
カタルーニャ州はスペインに17ある自治州のひとつで、
地中海に面したイベリア半島北東部にあり、フランスと国境を接しています。
州はバルセロナ、タラゴナ、ジローナ、リェリダの4県に分かれており、州都は世界の人気観光地のバルセロナ。
この州では、スペイン語のほかにカタルーニャ語が公用語になっており、スペイン語よりも優勢です。
ここには「自分はスペイン人ではない。カタルーニャ人だ」という人が多々住んでいます。
カタルーニャ人というのは、カタルーニャ語を母語とし、自分自身をカタルーニャ人だと思う人々のこと。
この民族意識はいつ頃から存在するのかは明確にわかっていないものの、
今から1000年以上も前に国としてのアイデンティティを確立したこの地域は、
スペインとは異なる独自の民族、文化、言語を有しています。
公でのカタルーニャ語を禁じられた時代も
カタルーニャでは、12世紀に議会が発足。
13世紀には自治制度を確立し、最初のカタルーニャ憲法も発布されたものの、
18世紀初めに起きたスペイン王位継承戦争で負けたことから自治権をはく奪され、
カタルーニャ語の公での使用まで禁止されました。
特にフランコの独裁政権下では厳しい弾圧を受けています。
フランコの死後、1979年に自治権を回復し、カタルーニャ語も復権を果たしました。
また、イベリア半島で最初に産業革命の起こったカタルーニャは経済的にとても潤った州で、
2012年のGDPを見ると2,077億ユーロとスペイン全体の20%を占めます。
この数字はデンマーク1国と同等で、ポルトガルやフィンランド、アイルランドを上回ります。
ちなみに、スペインの他州でカタルーニャ人は働き者だと評価される以外に、
ケチだとも揶揄されていますが、確かによく働きケチならばお金は貯まりますね(笑)
カタルーニャの独立を謳う人々は、国家の財政赤字を埋めるためにカタルーニャが経済的損害を被っており、
納めた税金よりも受けるべき恩恵が少ないと主張しています。
投票者の8割が独立を望んだ住民投票
このような民族意識や歴史的経緯、経済力を背景に、近年独立運動が盛んですが、
実は独立気運は昔からあり、中世にはカタルーニャ君主国も存在し、
短期間ながら17世紀から20世紀にかけて4回もカタルーニャ共和国が成立しているのです。
昨年11月9日、カタルーニャ州ではスペインからのカタルーニャ州分離独立の是非を問う住民投票を実施。
投票率は半分にも及ばなかったものの、80.76%が独立を支持する結果が出ました。
なお、スペインの憲法裁判所は、主権に関する住民投票を実施する権利は中央政府のみにあるとし、
全員一致でこの住民投票は違憲だという判決を下しています。
今年の9月に行われたカタルーニャ自治州議会選挙で独立支持派が議会の多数を占めたことを受け、
11月9日にはカタルーニャ州議会は独立手続きを開始する決議を採択。
18か月以内に完全に独立することを表明しました。
これに対し、翌々日にはスペインの憲法裁判所は独立を阻止するためにスペイン政府が行った申し立てを受理し、
独立に向けた手続きの差し止めを決定。
それでもカタルーニャ州政府は手続きを進めると発表し、スペイン政府との対立が一段と激しくなっています。
簡単ではない独立への道
この独立問題は、居住している国ではあるものの、
実際にカタルーニャ州に住んでいるわけでも事情に詳しいわけでもない外国人の私が容易く意見する問題ではありません。
ただ、もし自分がカタルーニャ人だったら、やはり独立したいかな、と。
カタルーニャが一国家として独立するには、EUに留まれるのかどうか、
通貨のユーロを使い続けられるのか等々、スペインの外でも交渉が待っています。
独立派はスペインの一地方であることのデメリットを主張しますが、
反対にスペインという国に属することのメリットもあるわけです。
そう考えると、今の時点ではまだ独立は遠いような気がします。
実は私が住むバレンシアもカタルーニャ語圏で、
バレンシア語(カタルーニャ語の方言)が州の公用語になっています。
昔はバレンシア王国が栄えたという歴史的背景もあり、
もしもカタルーニャという国家が生まれたらバレンシアにも分離独立の声があがるのか、そこにとても興味があります。