今年の復活の日曜日は4月5日
日本人にはあまり馴染みのない習慣ながら、イースターと聞くとイースターバニーやイースターエッグを思い出しますね。私たちには欧米の習慣だとインプットされていますが、スペインの伝統ではありません。そもそも欧米という括りが広過ぎるのかと。よく「欧米では○○である」と耳にしますが、スペインでは違うけど・・・と思うこともしばしば。歴史や文化、宗教の異なる国々なので、違っても当然ですね。
イースター(復活祭)はスペイン語でパスクワと言います。移動祝日で、“春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日”が復活の日曜日になるので毎年日付が変わり、今年は4月5日に当たります。ほかの国々同様、十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日めに復活したことを祝う、キリスト教では大切な行事です。
スぺインでは聖週間を盛大に祝う
スペインでは、イースター直前の1週間により重きを置いています。この1週間は日本語では聖週間、スペイン語ではセマナ・サンタと呼ばれています。英語だとホーリー・ウィークですね。イエス・キリストが処刑を覚悟してエルサレムに着いてからの受難と死を偲ぶ期間とされています。また、カーニバルが終わった翌日の灰の水曜日から聖週間最終日の聖土曜日までの46日間は四旬節。昔この間は肉類や卵、乳製品の摂取が禁じられ、食事も1日1回のみという習慣がありました。今でも敬虔な信者は肉食を絶つそうで、この時期にはスーパーにも塩ダラコーナーが設置されます。厳しい習慣がなくなった今も、聖週間中は塩ダラ料理がメジャーなのです。
聖週間の間、スペインの各地では、キリスト像やマリア像をのせたパソと呼ばれる山車が教会から担ぎ出され、信徒や楽隊とともに町を練り歩きます。氏子に担がれるお神輿のようですが、お神輿のように威勢よく担ぐのではなく、ゆっくり静かに歩を進めて行きます。
キリスト像やマリア像を担ぎ出す宗教行列
この宗教行列は、特にアンダルシア地方が大掛かりで有名です。厳かな中に華やかさも備えた独特の雰囲気を醸し出し、世界中から大勢の観光客が見物に訪れます。中には1トン以上もある山車があり、大勢の担ぎ手が交代しながら何時間も道をゆきます。マラガのように日本のお神輿式に担ぐ山車もあれば、セビージャのように山車の真下で布に隠れて前が見えない状態で号令に合わせて担ぐものも。ハリウッド俳優のアントニオ・バンデラスはマラガ出身で、毎年聖週間に故郷に戻り山車を担いでいるそうです。また、マリア信仰の強いアンダルシア地方だからか、マリア像の美しさに圧倒されます。豪華な衣装と長いマントを身にまとい、大きな冠や宝石をつけ、花に囲まれ、頬には大粒のガラスの涙。天蓋のついた山車に乗り、厳かな音楽に合わせ進んでいく様子は信者でなくとも見惚れてしまうこと間違いありません。規模や山車の大小は変われど、聖週間の間はこのような宗教行列がスペインのあちこちを練り歩いています。
聖週間中の金曜日は、キリストが十字架にかけられ亡くなった日。聖金曜日と呼ばれ、この日はスペイン全土の祝日になっています。
イースター時期のお菓子
聖週間から復活祭にかけて食べるお菓子といえば、トリーハスが有名です。これはスペイン版フレンチトースト。但し、日本で食べるフレンチトーストとは違い、かなりベチャっとした仕上がりで強烈に甘いです。私が住むバレンシア地方ではあまり見かけないこともあり、口にすることはありません。ここバレンシアでは、パン・ケマードやモナ・デ・パスクワと呼ばれるパンを食べます。パン・ケマードはほんのり甘い素朴なパンで、モナ・デ・パスクワはゆで卵か卵型のチョコレートがのったもの。同じモナ・デ・パスクワでも、カタルーニャ地方ではケーキになるそうです。
キリスト教徒ではない私ですが、いつの間にかこの時期には聖週間の宗教行列を見に行き、パン・ケマードやモナ・デ・パスクワを食べることが習慣になりました。