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【暮らし・住まい】スイスの教育制度 -即戦力の人材を育てる、職業教育に力を入れる国-【スイス】

 

1_1クリスマスやお正月と、子供達にとっては楽しいイベントが続きます。しかしながら、年明けに試験を控えている受験生は、そうそう楽しんでばかりもいられません。高校受験、大学受験のみならず、受験競争は低年齢化し、近年では幼稚園受験も珍しいことではなくなりました。少子化で大学入学のハードルが下がったからこそ、より良い大学を目指すための競争が激しくなったような気がします。韓国やアメリカなどの国々でも、受験競争が厳しいのは同じようです。
私は、大学留学生としてドイツとスイスで生活してきましたが、思った以上に大学生という地位が優遇されていることに驚いたものです。それもそのはず、ドイツ語圏では総合大学は全て国立で、大学進学率はその当時で20%くらいだったからです。丁度、戦前の日本で国立大学生が「帝大生」と言われていた感じでしょうか。ほとんど皆が大学や短大へ進学する日本から来た私はかなり驚きました。

 

日本と違う教育制度

世界の教育制度は、大きく2つのタイプに分けることが出来ます。一つは「単線型学校体系」で、戦後の日本やアメリカなどで行われている制度。義務教育卒業まで、将来の進路や能力に関係なく皆が同じ学校に通います。もう一つの「分岐型学校体系」は、戦前の日本や現在のヨーロッパで見られる制度で、小学校は共通のカリキュラムで学びますが、中学校進学段階から進路と能力別に学校が分けられる制度です。
ヨーロッパのほとんどの国では、高校卒業資格が大学入学の条件となります。医学部など以外では、大学入試はありません。ドイツ語圏(ドイツ、スイス、オーストリア)では、普通高校に該当するギムナジウムでしか高校卒業資格を得られません。このギムナジウムへは、全生徒の内の3割しか進学できないのです。大多数のその他の生徒は、普通高校へは進学せず、職業訓練を始めます。
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教育と職業教育を同時にするデュアルシステム

職業訓練とは、耳慣れない言葉だと思います。簡単に言えば、将来自分の付きたい職業を現場で研修して習得すると言うことです。例えば、パン職人になりたいと思ったら、中学を卒業する前にいくつかのパン屋さんに訓練生の応募をします。そこで採用されたら、週3回3年間(職種によって異なる)パン屋の中で材料の仕入れ方、パンの作り方、接客、経営などを学びます。そして、週2回は他の職業訓練をしている人たちと職業学校へ通い、コンピューターや語学、簿記などを学びます。3年間の研修が終わると国家試験があり、合格すると晴れてパン職人の国家資格が与えられます。この資格があると即戦力というわけです。日本のように、入社してから仕事を学んでいくのとは大きく異なります。
このように、中学卒業後に職業訓練をしながら職業学校に通う制度を「二元制度(デュアルシステム)」と呼び、ドイツ語圏では多くの生徒がこの方式で学んでいます。
例えばスイスでは、訓練できる職種は260種以上もあります。商業資格という大きなくくりもあれば、私の知り合いの娘さんなどは教会の壁画金箔修理という非常に狭い分野の資格を勉強していたりします。ちなみに、この資格は全スイスで2人しか訓練をしている生徒がいなかったようです。ドイツ語圏では、専門の知識を持った職人はマイスターとして尊敬され、生活するのに十分な給料を得ることが出来ます。大卒でなければ良い仕事にありつけない…ということはないのです。

 

国際化による変化

日本で学んでいたスイス人留学生が、英文学を勉強していた生徒が銀行へ就職したり、経済学部を出た生徒が警察官になったりする日本の現状を非常に不思議がっていました。同じ職業に就くためには、スイスでは大学卒業資格は必要ないし、ましてや大学で学んだことと全く異なる職業に就くなんて、何のための大学だ?と。
入学するまで必死に勉強して、あとは青春を謳歌する日本の大学生の生活を見たら(勿論全員ではありませんが)、そう思うのは無理もないでしょう(私自身の反省もこめて…)。しかし、日本では就職において大卒を前提としたものが多く、就職するために大学資格を取りに行くと言う本末転倒の状況です。本当に勉強したい人が大学へ行き、そうでない人は手に職をつけるというドイツ型の制度は素晴らしいと私は思います。
3JPG_1しかし、近年この制度も揺らぎ始めています。まずは、国際化の波。ヨーロッパではシェンゲン協定により、国境を越えて自由に就業したり居住したりできるようになりました。そうすると、給料も高く生活レベルの高い国には各国のエリートが集まってきます。スイスもその事例にもれず、エリート外国人がやってきました。こうなると、求人の段階で一番簡単なふるい分けは学歴となり、職業資格しか持たないスイス人よりも大卒資格を持つ外国人のほうが職を得るようになりました。ドイツ語圏の学校制度を知る企業ならまだ話は分かってくれますが、大卒者が多い国の企業などは最低で学士を応募基準としていたりします。
こういった現状を打破するために、大学改革が行われ、学士や修士制度の導入、在学期間の短期間化が実現し、以前よりも短期間で大卒資格が取れるようになりました。また大学の他に、専門大学が設置され、職業訓練を行った生徒が学士や修士の資格を取ることができるようになりました。

 

高学歴化の弊害

ドイツ式の制度が理想だなと思っていた私は、現在の状況を残念に思っています。高学歴化が進んできたので、各企業での中卒後の職業訓練生の受け入れが年々減ってきています。例えば、かつて30人の訓練生を受け入れてきた銀行は、現在10人の訓練生と20人の大学生の研修制の受け入れに変更しました。訓練の場所が減ると、職業訓練は成り立ちません。こうして職業教育を受けた生徒の就職口が大卒者へ変わっていきます。また、学歴が上がるほどホワイトカラーの仕事を求め、精肉業など給料がいくら良くても訓練生が集まらない現状です。職業資格を持たない大卒制の失業率も高く、「大学は出たけれど…」という若者の多いこと。
高学歴化と大学の乱立の行く末を現在の日本で見ているだけに、スイスにはここで今一度立ち止まって欲しいものだと思います。最近、このような現状を政治家が話し始めているので、少し期待したいと思います。
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