日本では4月1日から、多くの学生が新社会人として新たな人生を歩むことになります。大手企業では会場を貸し切って大々的に入社式が行われ、その模様はテレビメディアでも取り上げられるほど。
パリパリのスーツに着せられた新社会人のみなさんは、これからはじまる第二の人生に胸を躍らせ、それと同時に多少の不安も抱えていることでしょう。
では、ベトナムでは日本のような一斉入社の習慣、そして入社式のようなものはあるのでしょうか。今回は新社会人の旅立ちをご紹介したいと思います。
日本では4月1日入社が基本ですが、ベトナムでは新社会人の一斉入社のような概念はまだありません。その理由はいくつか考えられますが、まずベトナム人学生の卒業する時期が、大学によって異なることが挙げられます。多くのベトナム人は、3月、6月、9月と複数月にばらついて卒業します。
日本では、就職活動は大学4年生の春くらいからはじまり、早い人で夏には内定がでますね。卒業間近まで就職先が見つからない学生は、往々に焦っていることでしょう。
一方、ベトナム人は日本人からみるとかなりお気楽で、卒業ぎりぎりまで職探しをしない学生がほとんどです。「給料が安い」、「家から遠い」などと文句を言いながら、職を決めかねている学生をよくみかけます。
4月1日というタイムリミットがないので、「早く会社から内定を貰わなければ!」という強迫観念に迫られることもあまりないのでしょうね。
また、卒業してから語学塾や資格学校に通ったり、留学したりとのんびりしている学生も多い印象を受けます。
就職活動の方法は、日本人学生のようにインターネットの求職サイトを利用して行います。現在ベトナムは売り手市場なので、大学卒業という学歴を持っていれば、まず職探しに困ることはありません。
ただし、入社式を行う企業もあります。入社式を開催する企業の共通点は、「大手企業」、「従業員を大量に雇用している企業」、「外資企業」が挙げられます。日本人管理職の間では、社是社訓、会社のポリシーなどをベトナム人従業員に伝える貴重な機会と見なされています。
特に日系企業の製造業やメーカーは、入社式を行うことが多いですね。
また、銀行系もメガバンクは一部入社式を行うところもあるようです。銀行に入社するためには、銀行大学を卒業する必要があるのですが、彼らの卒業時期が似通っているので入社式も可能というわけです。
ただし、通常は入社式という堅苦しいものはなく、従業員の前で自己紹介をする程度。企業によってはケーキを用意したり、勤務終了後に皆で食事に行くこともままあります。
日本ではどんな小さな企業であっても入社式は必ず行います。これは、「新たな人生の門出を祝う」、「社員が一丸となる」という考えが強いためではないかと筆者は考えます。
その点、ベトナムは仕事に対して仲間意識は強いものの、集団意識は日本と比べると低い印象を受けます。
また、ベトナム人は一つの会社に長く働くよりも、たくさんの会社で勤務経験を積んだ方がよしとされている傾向があるので、せっかく入社式を行っても、数ヶ月で辞めていってしまう社員が多いのも、普及しない原因かもしれません。
まだ20代半ばにも関わらず、履歴書を見ると5社も6社も経験しているベトナム人をしばしば見かけます。
発展途上国のベトナムでは、一昔前までは正社員として正規雇用するといった、企業の基本的な組織体質・概念がありませんでした。企業に入社しても規律意識が非常に低く、「雨が降っているので会社休みます」、「疲れたから会社辞めます」といった理由が現在でもまかり通っています。日本でもアルバイトの入社式をやるところはないのと同じように、社員の出入りが激しいベトナムにおいて、入社式は無用の行事なのかな、と筆者は考えるときがあります。